こんにちは、ToMO(@tomo2011_08)です。
小規模企業共済は、中小企業基盤整備機構が提供する経営者や個人事業主向けの共済です。
事業主として日々奮闘する中で、「万が一の時の備えは十分だろうか」「引退後の生活設計はどうするべきか」といった疑問や悩みをかかえておられる方にとって重要な制度の一つです。
事業主である加入者にとっては大事な老後の資金なので、小規模企業共済についてよく理解することはとても重要なことです。
そこでこの記事では、小規模企業共済制度の基本的な概要や特徴、注意点、加入手続きなどについて詳しくご紹介します。
中小企業の経営者や個人事業主で小規模企業共済に加入されている方、加入を検討されている方におすすめの記事になります。
目次
小規模企業共済とは?
小規模企業共済は、個人事業主や小規模企業の経営者や役員などのための積み立ての退職金制度です。
独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営し、事業主の廃業や退職後の生活を支える重要な役割を果たします。
この制度は、大企業の従業員が享受できる厚生年金や退職金制度に相当するもので、経営者や個人事業主の方の将来の経済的安定を確保することを目的としています。
現役時代に掛金を積み立て、事業をやめたり役員を退職したりした場合に、それまで積み立てた掛金に応じた共済金を受取ることができます。
加入者は毎月の掛金を積み立て、将来的に事業を廃止した際などに、まとまった資金を受け取ることができます。
小規模企業共済への加入条件
小規模企業共済の加入条件は下記の通り、業種などによって異なります。
- 建設業、製造業、運輸業、不動産業、農業、サービス業(宿泊業、娯楽業に限る)などを営む場合は、常時使用する従業員の数が20人以下の個人事業主または会社の役員
- 商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業、娯楽業を除く)を営む場合は、常時使用する従業員の数が5人以下の個人事業主または会社の役員
- 事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員や常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員
- 常時使用する従業員の数が20人以下であって、農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員
- 常時使用する従業員の数が5人以下の弁護士法人、税理士法人などの士業法人の社員
- 上記1、2に該当する個人事業主が営む事業の経営に携わる共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)
つまり、「事業の運営に実質的に関わっている人」が対象となります。
重要なのは、加入資格があるうちに加入しておけば、その後、会社の規模が大きくなって従業員数が増えたとしても、加入資格を失うことなく掛金を継続できる点です。
将来的な事業拡大を見据えるならば、早めの加入を検討する価値があります。
共済金等の種類と請求事由
請求事由によって共済金等は「共済金A」「共済金B」「準共済金」「解約手当金」に分けられます。
共済契約者の事業上の地位によっても受け取れる共済金等の種類が異なります。
以下では契約者が会社等役員の場合の共済金等の種類と請求事由になります。
<共済金A>
- 会社等が解散した場合(会社が破産した場合も該当)
<共済金B>
- 疾病・負傷により役員を退任した場合
- 65歳以上で役員を退任した場合(退任日が平成28年3月以前の場合、疾病・負傷以外の理由による退任をしたときは65歳以上であっても「準共済金」になる)
- 共済契約者の方が亡くなられた場合
- 老齢給付(65歳以上で180ヵ月以上掛金を払い込んだ方が対象、仕事を続けたまま、共済金の請求が可能)
<準共済金>
- 法人の解散や疾病・負傷によらず、65歳未満で役員を退任した場合
<解約手当金>
- 任意解約(共済契約者による任意の解約)
- 機構解約(掛金を12ヵ月以上滞納した場合に中小機構が行う解約)
小規模企業共済の特徴
小規模企業共済に加入後にどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは、小規模企業共済の特徴について、4つ説明していきます。
掛金を自由に設定可能
特徴の1つ目は掛金を柔軟に設定できる点です。
掛金は自身の経営状況や将来の目標に合わせて、月額1,000円から70,000円の範囲内において500円単位で設定できます。
自由に掛金を決められます。
この幅広い選択肢により、無理のない範囲で計画的に資金を積み立てることができます。
さらに、小規模企業共済に加入後も掛金の増額や減額が可能です。
業績が好調な時期には掛金を増やし、逆に厳しい時期には減額するなど、経営の状況に応じて柔軟に対応できます。
これは、長期的な視点で事業を継続していく上で非常に重要な特徴といえるでしょう。
また、毎月の定額払いだけでなく、半年払いや一年払いなどの選択肢もあり、資金繰りに合わせた支払い方法を選ぶことができます。
このような掛金の柔軟性は余裕をもった経営をすることにつながります。
税制上のメリット
特徴の2つ目は税制上のメリットがある点です。
小規模企業共済の掛金は、全額が小規模企業共済等掛金控除として、課税対象所得から控除されます。
つまり、小規模企業共済の掛金を支払うことで、その分だけ所得税の負担を軽減できるのです。
例えば、課税される所得金額が1,000万円/年の方で年間84万円(月7万円)を掛金として支払う場合、最大で約36万円の節税効果が得られます。
受取方法が選択可能
特徴の3つ目は各自に合った受取方法を選択することができる点です。
経営者や個人事業主にとって、将来の資金需要や生活設計に合わせて最適な受取方法を選択できることは、大きな利点となるでしょう。
小規模企業共済の共済金の受取方法は以下の3種類です。
- 一括受取り
- 分割受取り
- 一括受取りと分割受取りの併用
上記のうち、「分割受取り」および「一括受取りと分割受取りの併用」を希望する場合は、以下の要件を全て満たす必要があります。
- 共済金Aまたは共済金Bであること
- 請求事由が共済契約者の死亡でないこと
- 請求事由が発生した日に60歳以上であること
- 共済金の額が次のとおりであること
・分割受取りの場合:300万円以上
・一括受取りと分割受取りの併用の場合:330万円以上
- 一括で受け取る金額が30万円以上
- 分割で受け取る金額が300万円以上
このように、小規模企業共済は受取方法の選択肢が豊富で、個人のニーズに合わせた資金活用ができます。
ライフステージや事業の状況に応じて最適な受取方法を選択することで、より効果的な資金運用が可能となるでしょう。
低金利の貸付が利用可能
特徴の4つ目は低金利で貸付制度がある点です。
小規模企業共済の加入者は、納付した掛金の範囲内で、市場金利よりも低い金利で資金を借入れることができます。
また、小規模企業共済では様々な貸付制度を利用できることも魅力の1つです。
現在の貸付の種類と利率は下記の通りです。
このように、小規模企業共済の豊富な種類の低金利貸付制度は、経営者にとって将来の備えだけでなく、現在の事業展開においても味方となる制度といえるでしょう。
小規模企業共済の注意点
小規模企業共済に加入にあたって、注意するべき点が3つあります。
ここでは、小規模企業共済の注意点について詳しく説明していきます。
掛け捨てのリスクがある
小規模企業共済には、掛け捨てのリスクがあることを認識しておく必要があります。
この制度は長期的な視点で運用されるものですが、特定の条件下では掛金が無駄になってしまう可能性があるのです。
小規模共済で掛け捨てになる場合は以下の通りです。
長期的に継続することで、税制上のメリットや将来の生活保障を得られるメリットがあるため、加入を検討する際は、自身の事業計画や将来のビジョンをしっかりと見据えた上で、慎重に判断することが重要です。
また、無理ない掛金月額に設定して加入を継続することで、掛け捨てを回避することができます。
元本割れのリスクがある
小規模企業共済の注意点として元本割れのリスクも認識しておく必要があります。
元本割れとは、払い込んだ掛金の総額よりも受け取る共済金が少なくなる状況を指します。
この現象は、主に加入後短期間で解約する場合に発生しやすくなります。
具体的には、掛金納付月数が20年未満で任意解約をすると、元本割れが起こります。
ただし、あくまで自己都合による任意解約や、12ヵ月以上の掛金滞納による機構解約になった場合です。
法人の解散や、役員が病気やけが、または65歳以上で退任した場合、共済契約者が亡くなられた場合などに受け取る共済金は元本割れしません。
小規模企業共済においては、短期的な資金需要のために解約するのではなく、掛金の減額を行うなどして退職金が必要となる時まで継続することが、元本割れのリスクを最小限に抑える賢明な選択といえるでしょう。
共済金受給時の課税
小規模企業共済において、共済金を受取る際の課税についても理解しておくことが重要です。
共済金は一括または分割で受け取ることができますが、いずれの場合も税金が課されます。
しかし、全額が課税対象ではないため大きなデメリットにはなりません。
- 一括で受け取る場合:退職所得(他の退職金と合算して課税。ただし、退職所得控除が適用されるため、受給額によっては実質的な税負担が軽減される可能性がある。)
- 分割で受け取る場合:公的年金等の雑所得(他の所得と合算して総合課税。この場合、需給開始時の年齢や受給期間によって課税される金額が変わる)
小規模企業共済の加入手続き
小規模企業共済の加入には、オンラインや窓口にて申請が必要となります。
オンラインで加入する場合
オンラインにて小規模企業共済にご加入の場合は、マイナンバーカードとスマートフォンがあれば、窓口に出向くことなく、時間も気にせず、自宅や職場から小規模企業共済に申込みすることが可能です。
オンラインでの小規模企業共済加入手続き手順は以下の通りです。
- 中小機構のウェブサイトにアクセスし、メールアドレス登録
- マイナンバーカード読み取りや身分証明書や事業を証明する書類のアップロード
- 契約者情報・加入申込入力
- 掛金引落口座の設定
- 受付確認のメールの確認
- 中小企業基盤機構による審査(審査には40~60日かかるのが一般的)
- <審査承認となった場合> 契約証書の受領(郵送)
オンラインでの加入手続きに限り、ゆうちょ銀行や一部のインターネット専業銀行の口座も、引落口座として利用できます。
窓口で加入する場合
オンライン以外にも、お近くの商工会や商工会議所や金融機関などでの小規模企業共済に申込みすることが可能です。
窓口にて小規模企業共済に加入する際には、必要書類をご持参いただき、窓口で加入手続きを行う必要があります。
まとめ
今回は、小規模企業共済について説明してきました。
小規模企業共済とは、独立行政法人である中小企業基盤整備機構が提供する共済で、将来の蓄えを行いながら、節税などのメリットを享受できるサービスです。
一方で、元本割れするリスクなどがあるため、長期的な視点で運用することができるのかなど慎重に検討しましょう。
元本割れは、あくまで「任意解約」の場合に限られ、事業の廃止や役員の退職といった正規の理由で共済金として受け取るのであれば、多くの場合、もっとも短い期間で元本を上回る額を受取れます。
また、受け取り時の税金も各種控除により大幅に軽減されます。
ただし、任意解約、特に加入期間が短い場合や掛金を増減させた後の任意解約は、元本割れのリスクが非常に高いため注意が必要です。
掛金の支払いが困難になった場合は、払止めや貸付制度といったセーフティネットを活用し、出来る限り共済金として受け取ることを目指すのが賢明な活用法といえるでしょう。
制度のメリット・デメリットを正しく理解し、ご自身の事業計画やライフプランに合わせて活用すれば、小規模企業共済は経営者の資産形成を力強くサポートしてくれるはずです。
今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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